《第五話》『その肌、究極素材につき、危険』
「ぬははっ、まあ、本当は料理の失敗の侘びとして、背中を流してやろうとおもっただけだ」
「そ、それだけでも僕には刺激が強すぎるよっ!」
「まったく、いつまでお前は顔を覆っているんだ。未だ顔は真っ赤になるが、まともに接吻できるようになったのも、ついこの間のことだしな」
「だ、だって、恥ずかしいんだもん――」
「ふふっ、それでいいのだ。そのままのお前で居てくれ。そら、背中を差し出せ」
僕は言われた通り、呉葉に背中を向けた。ひとまず、これでようやく手で顔を覆い続ける必要はなくなった。
「さて――こいつを、だな……」
「――何やってんの?」
僕の背後で、石鹸を泡立てる音。しかし、よくよく見てみれば、僕が体を洗うために持ち込んだタオルはそのままで、ついでに言えば呉葉はタオルなんて持ってなかったような。
ぴとっ、
「ひゃあっ!?」
僕の背中に、程よく弾力のある柔らかな感触が密着した。そして、暖かいような熱いような、それでいてじわりとしたこの温度。――これは、どう考えても、
「ななななな、な、なっ、何してんの!?」
「む? ただ妾は、身体の前面を使って普通にお前の背中を洗っているだけだが?」
「普通って常識指し示す言葉だと思ったんだけど!?」
しかし、僕の背中を刺激するふにょふにょさわさわとした動きは止まない。
僕の目の前が、だんだん白んで――、
「くっくっく、どうだ、柔らかかろう? 決して大きくはないが、触り心地としては充分で、肌の質にも自信があるつもりだからな」
「う、ううう、ううっ、う――」
ふにょふにょ、さわさわ。あたまに、おもいなにかがつまって――、
「ほーれほれほれ」
「ふぅっ、う、う、う――」
ぶばばっっ!!
「――あ、」
「――――…………」
「――蛇口から血が出たらこんな風になるのだろうな」