《第596話》『星々の果てより』
「消えた――? どういうことだ……?」
「多分、バシャールは既に死んでいたんだと思います」
「He is dead!? では、目の前にいたのは一体誰なのデース!」
「そいつはきっと、さっきの爺さんの残留思念だったんだろうさ。死んでも、死んだことに気がつかず、ここまで来たんだろうね」
彼は、身体が滅んでも、それにすら気がつかない程、今の地球に到着することを、待望していたのかもしれない。
それは、かつての先祖たちが住んでいた星を見たかったからか。はたまた、孤独から、同じ人間がこの宇宙の中にも存在することを確かめたかったのか。
「――つぅことは、最初からあいつを撃とうが何しようが、意味はなかったってことか……。二人とも、気がついてたのか?」
「対面したときに、なんとなく」
「アタシは一応、一目で分かったよ」
一応、僕は普段そっちをメインに対応している。そして僕の何倍も場数を踏んでいるディア先輩ならば、あっという間に見抜いてもおかしくはない。
「なんと言うか、敵であるのにどこかLovable、憎めないヒトだったと思うのは、Meだけデース?」
「いや、俺も同じ気持ちだ。やらかしたことは許されることじゃないが、何かを求める気持ちってヤツは、痛いほど伝わって来たぜ」
彼は、自分の見られた光景に納得できたのだろうか。多分、最初は納得できなかったんだと思う。でなければ、地上に武器を向けたりはしなかったに違いない。
けど、最後は満足げな表情で消えていった。もしかすると、故郷だとか同じ存在を見つけるだとか以前に、ただ、他者に自分の存在を認めてもらいたかっただけなのかもしれない。
「よっっった、かァああああああああああああああああああああッッ!!」
「え――? うわぁ!?」
僕を叫び呼ぶ声に振り返ると、ぽっかりと断裂した部屋の穴から、真っ白な鬼神が飛び出して来た。
そして、僕は思いっきり押し倒される。
「助けは色々借りたが、最後は妾の手で決着をつけてきたぞ! どうだ、こんな妻を持って誇らしかろう!」
「わ、わかった、わかったから! 別に重くはないけど、落ち着いて!」
僕の魂を認めてくれる、大切なヒトが帰って来た。僕も宇宙よりの来訪者に、あんなに偉そうに説教をしたんだ。
その通り、僕も自身の命の責任に胸を張り、前へと進もう。今はもう開けられた孤独の玉座を振り返りながら、強く、心に刻んだ。




