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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十七章
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《第595話》『誇り、責任』

「何を、意味の分からないことを――」

「じゃあ聞くけど、君は何者なの?」

「それは先ほど申し上げたでしょう? 私は、かつてこの星にあった国家の末裔で――、」

「さっき聞いたばかりだから、言われるまでもなく知ってるよ。でも、それはとても重要で、だけど一つの重要なことを見落としてる」

「あなたは、何を――?」


 きっと、このヒトはいろいろなことを知っているのだろう。けれど、その一方で大きく欠けているモノもある。


「あなたは、多くの――本当に多くのヒト達の歴史の上に、存在してるんでしょ?」

「――!」


 それは、他者と言う存在。そしてそれを知ることで得られるモノ、その全て。


「多くのヒトが今までいて、そして最後にあなたが生まれた。そんな人々の多くの世界があってあなたがいるのに、どうしてそんな風に軽く言ってのけるの?」

「…………」

「そして僕も、僕自身の命に責任がある。あなたのそれとはまるで全然違うけど、大切な――僕の大切なヒトが、全身全霊をかけて生かそうとしてくれている。僕に、それだけの価値を思ってくれている」


 命の責任は人それぞれで。そこから生まれる重さもそれぞれで。けど、そこに優劣はない。


「だから、僕もここまで来た。――本当のこと言うと、一度折れてしまいそうになったけど、愛するヒトのおかげで持ちこたえることができたんだ。それが、僕にとっての命の誇りだ」

「…………」

「…………」

「――あなたは、どっちの味方なのですか?」

「え――? あ……、」

「敵である筈の私を奮い立たせるような言葉を述べていることが、分かっていない筈がないでしょう?」

「そ、その、えっと――も、勿論、僕は僕たちの味方、だ、よ……?」

「フフッ――人間と言うのは、集団の思考傾向は皆同じモノだと思っていました。考え方は全く異なれど、現に、ラ・ムーは思考を統一し、発展してきたのですから」


 バシャールは微笑んだ。それはもう、非常に、人間的に。


「――そうですね。ここへきて、支配するつもりの住人に教えられるなど。頂点に立ち、皆を管理する資格はありません。完全に……私の負け、です」


 そうして、微笑みながら――まるで、空気に溶けていくように、消えていった。


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