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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十七章
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《第594話》『穢れしらずの精神』

「――私を殺しなさい」

「!」


 バシャールは息を荒く吐きながら、僕らを睨み付けた。


「どちらにせよ、このような問答はもはや無意味です。この部屋に侵入された上、システムの故障により防衛装置を起動することはできません。もはや、私は詰みなのです」


 感情が見え隠れしているためだろうか。このヒトも、人間なんだなと改めて認識した。だからこそ、その言葉が痛々しい。


「そもそも、何故私を見つけた時に排除を考えなかったのでしょう? 私には理解できません。合理性を欠いていると言えるでしょう。それとも、私が死ねばシステムを止められないとお考えですか? しかし、ならば即刻拘束するのが道理」


 見かけの上では、老人だった。その年齢も、その姿と違うことはないだろう。

 しかし、自棄になって叫ぶ姿は子供のようでもあった。

 孤独。生まれてより、誰ともかかわることの無かったが故の、精神的進みの無さ。

 何も経験したことのない、純真無垢な、過ぎる心。


「コーハイ――?」


 気がつけば、足を踏み出していた。


「さあ、終わらせるのです。あなた方の手で、自身の手で。その権利が、あなた方にはある。あなた方は、私に勝利したのだか――」


 そして、手も出ていた。


「……――っ!?」

「そんな諦め方、僕は許さない」


 平手打ちの、弾ける音。自分でも、どうして老人を殴ると言う、絵面からすれば暴挙極まりないことをしたのか、理解できない。けど――、


「あれだけたくさんのヒトを追いやって、不安にさせて、怪我をさせたり、命を奪ったり。とてつもないことをそれだけしているのに、当の本人があっさり諦める。それは明らかに冒涜で、ただの逃げも同然だよ」

「っ、っ、私に罪を償えとでも言うのですか? それはあまりにも非合理極まりありません。この星の歴史においても、正しくそれを行った者は数少ないでしょ――、」

「――なんでわからないのかな?」


 もしかしたら。呉葉も同じように言ったかもしれない。ついでに言えば、彼女のことだから、今の僕と同じように手が出ていたかもしれない。


「僕は、自分の命に責任を持てって、言ってるんだよ――ッ!」


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