表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十七章
589/1022

《第588話》『支配者』

「よもや、私の部屋にまでたどり着いてしまうとは――」

「あなたは――」

「私の名はバシャール。足が悪いので、座ったままで失礼させてもらいますよ」


 抉れたためにやけに開放的になったその部屋で、目の前の人物は眉をしかめる。

 椅子に座る人物は、声の通り若くも、そして女性でもない。こちらを見つめる眼下は落ちくぼみ、真っ白な頭髪の薄い頭にはいくつものシミ。溝の深いしわが顔じゅうに刻まれたその男性。


 バシャールは、見るからに衰えた老人だった。


「一体何をしたのですか? この浮遊大陸は、あなた方の技術力では、穴をあけることすらも難しい筈です」

「聞きたいのはこっちだ。あんたの仕業では――ないようだが」

「自らの身を危機にさらす筈がありません。直前、巨大な空間の裂け目が生まれる反応を感知しましたが」

「空間の裂け目――?」


 パッと思いつくことは、呉葉の空間転移だ。だが、それとこの巨大な穴を関連付けることは、僕にはできなかった。

 それよりも、僕は呉葉の安否のことが気になる。


「その場に呉葉は――誰かは、いなかったの?」

「あのエリアで戦っていた人物がいるのは理解しています。ですが、陸地を再現したエリアに、監視を行う機械は置かれていません」


 端的に言って、わからない。この老人は、そう言っていた。呉葉やディア先輩だけじゃない。彼自身の味方である、冀羅だっていた筈なのに。


「あなたは――何も思わないの? あなたの仲間だって、」

「分からない以上、思いようもありません。現在、エア・スカウト――ロボットが調査を行っていますが、今は情報が不足しているため、待つ必要があるでしょう」

「僕はそう言うことを言いたいんじゃ――っ」

「落ち着け」


 僕は文句の一つでも言ってやろうと思ったが、狼山先輩がそれを止めた。


「なぜ止めるんですか――!」

「俺達がここへ来た目的を忘れちゃ駄目だ。気持ちは分かるが――今は、信じて待つ時だぜ」

「――っ、…………」


 狼山先輩の言う通りだった。僕らは、決着を付けに来たのだから。


 この、謎の老人と。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ