《第587話》『穴の開いた大地』
「っ、何、これ――?」
戻ろうとして幾らか進むと、突然抉れた――いや、大穴が空いた場所にたどり着いた。
上から下まで、高層ビルの高さ以上の層。それを、対岸は上から下まで確認できるほどの直径で、眼下には雲と海と陸地が広がっている。
「一応、ここは俺達が辿って来た廊下だとか、部屋があったはずなんだが――」
「Oh、トンデモBigなholeがぽっかりデース――……」
すさまじい衝撃は、これの発生が原因であると推測できる。むしろ、これほどの大きさなら、少ないとも言えてしまえるかもしれない。
「呉葉、は――?」
僕は思い至る。この先のエリア、その上にあるまるで陸地のようなところでは、呉葉とディア先輩、そして冀羅が戦っていた筈だ。
しかし、今ここには何もない。何らかの事態があって、全て吹き飛んでしまった。
「呉葉は、呉葉は一体どうなったんですか!? この惨状、何が起こって――」
「お、俺に聞かれて、も――」
僕はどこかに大切なヒトの姿が無いかと探してみる。――が、あの白く美しく、しかし小さな童女のような鬼はどこにも見当たらなかった。
「っ、アレをWatchしてくだサーイ!」
呉葉!? 僕はトムさんの声に反応し、彼が指さしている対岸を見た。
――違った。ただ、一つの部屋の断面があるだけだった。
「なんだ、何があるんだ――?」
「よく見てください、アレ! アレです!」
狼山先輩は、ひたすら彼が指をさす方向に目を凝らした。
「Human! Humanデース!」
「おいおい、マジかよ。生きてる人間っぽいぜ、ありゃ」




