《第574話》『その頃の』
「大分離れたが――ここまで音が響いて来やがるな」
「そうですね――大丈夫かな呉葉……」
「ディア、も――」
すぐ追いつくと言った呉葉だったが、まるで広大な大地のようなその場所の端、姿を現した人工物の入り口を見つけ入るところまで来ても、一向に来る様子はない。
それどころか、ヒトの姿が見えなくなるほど離れた今でさえも、戦いの音が響いてくる。おそらく、地面を伝ってだろう。それは、戦いが激化していることを示していた。
「戻って加勢したい――けど、」
「そこまでのんきなことは、してられないぜ。潜入してそれがバレた場合、相手に対策を考える時間はなるべく少ない方がいい」
「分かってます。それに、何とかしてくるって、呉葉と約束しましたから」
「――お前らを見てると、俺も嫁さんと言うヤツが欲しくなってくるな。そりゃあ、全部が全部、お前らみたいにうまく行ってるワケじゃねぇだろうが……」
「ん――」
「――? どうした遊?」
「ん!」
「『ん!』 じゃ何が言いたいかわから――いてててて!? どっから持ってきたんだその剣山!」
ブスブス手の甲を刺される狼山先輩に苦笑いしながら、入口を見る。そこは先ほどと同様の、真っ白なスライドドアが、ぴっちり閉じている。
両側開きで、真ん中に境の入ったそれ。装飾も何も無いのに、そびえたつ門、と言う表現がしっくりくる。
そんな、妙に巨大な扉が――勢いよく開いた。
「――やってる場合じゃねぇか」
「メリハリ、重要――」
現れる、ロボットの兵隊たち。地上型二種以外にも、戦闘機をそのままサイズダウンしたかのような、空を飛ぶタイプまで。それが数えきれない程、わんさと目の前に出現する。
「――行きましょう。そのために、あの場を呉葉に任せてきたんですから」
未だ、冀羅以外の人間には出会っていない。彼らの正体も、未だ不明のまま。
できれば、もうこれ以上の戦いを無しに、終わらせたいけど――、




