《第562話》『歩兵』
「あらかた片付いたな、他愛無い――!」
攻撃のできない兵隊など、恐るるに足らなかった。おまけにそれぞれの能力が通じるようになっているため、妾達の一団は、完全に覇気を取り戻すまでに至っている。
この様子なら、未だ出てこぬ首謀者を締め上げるのも、容易いことだろう。勿論、それだけで妾達の現状が完全に良くなるわけではないが、市民の煽動をやめさせるだけで、効果は大きいはずだ。
「む――まだ残っていたか」
妾は金属の足が床のタイルを叩く音を聞き振り返る。どの道攻撃のできない、無力で憐れなロボットだ。のんびり片手間で鬼火を放つだけで事足りる――、
――何だ? 見たことのないロボットだな……。
上半身は両肩一点ずつから、二本、計四本の腕を生やし、赤い目が一つ点灯する、後頭部の長い頭部。下半身部分からは足が四本伸びてその2m近い巨体を支え、さらに後方からは尻尾のようなモノが生えている。
そして――両手、尻尾の先端には、まさしく銃口のような深淵が開いていた。それはまるで、地獄の入り口のようで。冷たい視線めいたものすら――、
「呉葉!」
「――っ!」
夜貴に、庇われるようにして妾は床に引き倒される。
そのすぐ頭上を――ビームの束が通り抜けた。
「っ、ジャマーが機能しているのではなかったか!?」
「してるよ! けど、もしかするとアレは――!」
ビームの通り抜けた先――白く、一点の穢れもなかったはずのその壁。
そこには、焼け焦げ黒ずんだ穴がいくつも空いていた。




