《第555話》『怪人の解散した怪奇の跡』
「なんだァ? 結局何もねぇじゃねぇか?」
敵が探りに来ていると聞いて。やたらと鋭角的な黒いヘルメットに、風にたなびく黒いマントと言う、こうして出来損ないのヒーローのような姿を強要させられバシャールに送り出されたが、現場は既に事の終わった後だった。
なお、この冀羅様ともあろう者がなぜそんな姿をしているのかと言えば、以前市民たちの意識を煽るために作った映像のせいだった。
それのせいで、これを着用して、人間共の前に姿を現さなくなってしまったため、非常に面倒くさい。だが、真の姿を取るわけにもいかないため、素直に受け取らざるを得ない。
――それはともかく、聞いた話では市民のフリをした能力を持たない反抗勢力が、転送装置のことを探っているとのことだった。そのはずだ。つまり、こっそりと暗躍していたってわけだ。
だが、現場には市民共が例の銃をぶっ放した後が残っており、すなわち、能力持ちと戦ったと言う事を意味している。
いろいろ、話が食い違っている。これは一体、どういうことだ?
『冀羅、どうやらここに妖怪の類が出現、市民たちと交戦したようデス』
「ンなモン見りゃわかる。妖気の残滓からするに、大したパワーは無かったようだが――」
ヘルメット内の通信機から声が発せられたので、返答する。
『混乱に乗じ、逃げ出したのデショウ。直後、ランドハンター一機が敵を認識、しかし撃破されてイマス。おそらく、同じ陣営の者達デス』
「いい加減、能力に対する探知に頼るのやめろよ。だから、侵入を許すんだよ。」
『市民の生体反応を一つ一つ登録したとして、照合して行動までに数秒時間がかかってしまうのデス。故に、最初から能力持ちへと的を絞っているのデス』
「それでいちいち呼ばれちゃたまんねーんだが」
俺はその場でターンし、本拠地へとピットインすべく歩き出す。ここでの仕事は、恐らくもうないだろう。あとは、ロボット共の仕事だ。
『それから冀羅』
「今度は何だよ?」
『第538地区への侵入者を確認しマシタ。直ちに帰還し、迎撃に当たってクダサイ』
――ホント、妖怪使いの荒い組織ですこと。




