《第553話》『もう少し強力な武器があれば、関節も狙い目かもしれない』
「……――ッ!」
『クカカカカカッ! 奇怪な機械、金属の塊など、この怪人トンマロクの手にかか、』
突如出現した怪人が、横からフライパンを叩きつけようと襲い掛かった。
――だが、機械に触れるなり、怪人トンマロクはバシュゥと消し飛んでしまう。案の定、対能力用結界は働いているようだった。
「どうすっかな――!」
木々の間を抜けて走る俺だが、どうにも向こうの方が足は速い。このままでは、追いつかれてしまうだろう。現に、奴は3mと離れていない真後ろだ。
そもそも、人間の足では、こう足元の状況が悪いと思った以上に速度が出せないもの。その一方、向こうは安定する多脚で、さらに先端は地面に突き刺すことで体制を安定させられる。
「しょうがねぇ――遊、投げるぞ!」
「!?」
俺はくるりと身をひねり、勢い付けて近くの岩の陰へと遊を放り投げる。軽い子供同然とは言え、飛ぶと言うよりは地面に転がる、と言ったほうが正しいが、肝心の遊は、ビームの弾痕に追いかけられつつも岩陰に転がった。
ロボットは、そんな遊の方へと狙いをつけている。
「余所見してんじゃねぇ、化け物!」
このロボットは、より正確な射撃を行うためか、銃のとりつけられた腕にもカメラが付いている。
だが、それはかなり小さい上に、正面から狙いことは難しい。なぜなら、銃口のサイドに、魚の眼のように取り付けられているからだ。
――だが、これだけ近ければ。僅かな風の瞬間的な強弱で弾が逸れる先ほどよりも、確実に撃ち抜ける。
俺のリボルバーが、火を噴いた。
両腕の片目が破壊されたためか、ロボットは一端射撃を中止した。だが、すぐに情報を修正し、遊へと狙いをつけるだろう。
――だが、その間に俺はロボットの後ろを走り抜けて反対側に回る。反対側のカメラも破壊する。
ボディとは異なり、ただの拳銃でもカメラが破壊可能であるのは幸運だった。全く打つ手なしの反則を押し付けられては、正直やっていられない。
だが、まだ脚部と頭部のカメラは破壊しない。俺は岩陰で横たわる遊を拾い上げ、再度走りだした。




