《第549話》『お芋お芋お芋』
『おいしいお芋はおいかがかな?』
突然現れたお芋、ポテトに続き、さらに突然現れる黒い影。突如として現れた正体不明のそれに、人々はパニックとなる。
あれは、あの怪人は――!
『怪人トンマロク! 怪奇現象と共に、ここに怪々たる惨状をす!』
薄く笑う恐ろし気な白い仮面に、黒のシルクハット、そして黒いマントの怪人。それは見間違うはずもない。
「遊、あいつ何やってんだ――!」
『吾輩――否、私、否、なんだったか、吾輩……いや、やはりワレは諸君らに地獄のような事件を届けに参った!』
しかも、一人称がブレている――っ!
『先日の放送、諸君らの中に目にしている者も多かろう? しかァし、ワレ、怪人トンマロク、そんな宣言とは関係なく先月より千差万別な事件を用意――、』
怪人を、言葉を遮るようにしてビームが貫いた。
「――っ!」
放たれたそれは、一人の市民がいつもの銃で撃ち込んだモノだった。宙に浮いていた怪人は、ボロ布のごとく地面に転落する。
――それにしても、随分と用意がいい。偶然、持ち込んできていたのか?
違った。人々が指にはめた指輪のようなモノから、明らかに質量の合わない巨大な長銃が飛び出してきていた。
俺は直感的に思う。もしや、あれがカギなのか? それにしても、まるで四次元ポケットみたいなことをする。ラ・ムーの力は何でもありか?
『用意、したッ!』
地面に落ちたトンマロクとはまた別のトンマロクが、人々の観ている反対側に出現したその周りには、ステンレス製のバケツが無数に浮いている。
『まずは第一弾! ポテトがぽてっと!』
バケツが引っくり返ると、中からは多量のフライドポテトが飛び出して来た。
――こいつもこいつで質量を無視しているが、こちらはツッコんでもしょうがないだろう。




