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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二章
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《第五十四話》『羨望する鬼神』

「貴様、は――」

「ふふん!」


 一瞬でも圧倒した鬼神を前に、腕を組み笑って見せる。実のところ、このボロボロさの通り立っているのもやっとだが、それでもなぜか、負ける気がしなかった。


「貴様は――本当に、鬼、なのか……? 妾、なのか――?」

「その通りだとも。妾は、お前の未来であり現在だ」


 地べたに尻餅をつく鬼の顔は、目を見開き驚愕に満ちていた。当然だろう。あの時に同じことを聞かされ押されれば、きっと妾も――おっと、目の前のこいつは妾だったか。


「…………」

「…………」

「ふっ――」

「――うん?」

「ふふ――ふっふっふっふっふっふ……はっはっはっはっはっはっは! あははははは!」

「どうした? 笑い茸でも食ったか?」

「ふふっ、すまんな。いやなに、おかしくてたまらぬのだ。だって、鬼がだぞ? 鬼が、呪怨の塊が、愛を語るのだぞ? ピエロは愛の果てに泣くが、逆は無い。如何なる道化よりも、滑稽極まりないぞ!」


 狂鬼姫は、目に涙を浮かべ爆笑している。相当におかしかったのか、それとも別の何かか。


「涙は運命を呪った結果だけで出るのではない」

「確かにな。それだけでは面白味が無い上に――、」


 妾と妾は、申し合せたわけでもないのに同時に口を開く。


「「疲れる!」」


 もはや、過去から呼ばれた妾に敵意は無いようだった。土のついた尻をパンパンと払い、立ち上がって空を見上げる。


「消えるのか?」

「いや? 貴様の夫の意識が落ちるまでの間は、大地に立っていられる」

「しぶとい奴め」

「貴様がそれを言えた義理か?」


 妾もまた、空を見上げた。


 夜空は、星々や街明かりに照らされ、藍色に染まっていた。


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