《第548話》『踊るポテト』
「狼山さん、遊ちゃんに関しての独り言、もう数えきれない程言ってますよ?」
「両手の指で足りません!」
「そ、そんなに言ってたか?」
まあ、俺自身も割としょっちゅう遊のことを口に出している自覚はあったが。しかし、それほどの回数まで呟いているとは思わなかった。
「狼山さんって――実はロリコンの気が?」
「しかもピグマリオンコンプレックス?」
「違うわ!」
「でもでも、ため息交じりにつぶやくところなんて、恋人を思い出しているような雰囲気を――」
「違うっつってんだろーが!」
「狼山さん。ヒトの趣味趣向はそれぞれですから!」
「――お前ら、あんまり調子に乗りすぎると後悔するぜ?」
「ひぃっ!? 街中で拳銃出さないでくださいよォ!?」
――ったく、こいつらは。
「そういうンじゃねぇよ。まあ、大事な家族であるには変わりないけどな。言うなれば、妹とか、娘とか、そんなカンジだ」
俺は銃を腰のホルスターに収納して、俺は話を続ける。
「ただ、頼もしいのは事実なんだ。あんな小さい女の子の姿だけどな、いつもの仕事でも、俺では対処しきれないところをあいつが埋めてくれるんだ」
「――狼山さんでも対処しきれない事態って、どんな事態ですか、あなたのターゲットって、人間の悪党でしたよね?」
「俺達みたいなただの人間でもそれなりにやれるヤツは、世の中たくさんいるってことだ。場合によっては、化け物を飼ってるヤツだっているしな。前情報無しに当たることもある」
「俺、そんなの相手したことありませんよ――」
「少し頑張れば、そういう仕事も回してもらえるさ。まあ、遊みたいな優秀なパートナーが付くかどうかは別だけどな。あいつは身体から出る糸を使って、いろんなモノを操れるし、記憶を覗くことだってできる。先読み能力は俺より高いし、なんでそんなモノ持ってきてるんだって言うモノでも、最終的に使うことになったりするときもある。――まあ、そんな力をいたずらに使うこともしょっちゅうだが、」
「っ、狼山さん、アレ!」
「そうそう、あんなふうにマ〇クのフライドポテトMサイズが50セットくらい纏めて飛来してきて、それが頭にぶっかけられたことも――って、何!?」
俺は、我が目を疑った。
今俺が言った通り、少し離れた転送装置付近その真上に、赤の箱とポテトが浮いていたのだから。
「遊!? いや、そんな筈――っ!」




