《第546話》『自律移動兵器』
「さて、そろそろ民家が増えてきたな」
一応不審がられる危険性も考え、最少人数、わずか三人でここまで来た俺達。山を降りしばらく歩いて、着実に目的地に辿りつきつつある。
ヒトの存在はまばら。時刻は夕方ごろなのだが、普通なら子供がその辺で遊んでいてもおかしくない時間であるにもかかわらず、そんな様子は見られない。
「っ、お前ら、待て」
「――っ! 狼山さん?」
普通なら、聞き逃してしまうような小さな音。だが、常に感覚を鋭敏にして居る俺には、それを耳にすることができた。
「っ、ロボット――!」
少し離れた建物の影から、それは現れる。
高さはおよそ2.5m、人間のような上半身に、前後左右一つずつキャタピラを備え付けた下半身の、金属の塊。
両腕には一般市民たちが持たされたものを一回り大きくしたかのような銃が取り付けられ、腰あたりには蜘蛛のようにも鎌のようにも見える歩脚が六本折りたたまれている。頭部に当たる平たくした十二面体部分には、赤い光が四点横一列に並んで輝き、戦車の砲塔のように首を回しながら獲物を探していた。
例えどんな場所であろうと詰め寄り射撃する、鋼鉄のスナイパーだ。
「落ち着け。奴らの性能はまだ底が知れねぇが、冷静にならなきゃ、どんな事態であっても対処できねぇ。――まあ、構えておくくらいはした方がいいかもな」
「――っ、わかりました」
きゅるきゅるとした音を、しかし思いの外静かな音を鳴らしながら。そいつは道路の上を移動している。
――だが、そいつは俺達が近くにいると言うのに、まるで何もいないかのように通り過ぎ、道を進んでいってしまった。
やはり、特殊な力を持たない俺達は眼中にないらしい。
「やっぱり、推測は当たってたようだな。いくぞ、お前ら」
他二人を伴って、俺達は目的地へと進む。目指すは、転送装置。
――あっさり、使うことができれば言う事無しなんだが。




