《第545話》『遊は敵の探知に引っかかる可能性が高いから置いてくるほかなかった』
「さて、と――おいこの中に、肩に自信のあるヤツいるか?」
俺は洞窟から出るなり、普通の人間で構成された斬り込み部隊(俺を含め三人)に問いかけた。すると、二人とも首を傾げだす。
「はい――? 狼山さん、突然どうしたんですか?」
「いや、何。万が一と言うことも考えて、敵のロボット兵を引き付けておこうかと思ってな。別に追いかけまわされろとか、そう言うことじゃないから安心してくれ」
「そ、そう言う事なら俺が!」
「名乗り出てくれると思ってたぜ。こっちはどう見てもヒョロイからな、ゴリマッチョ系男子のお前に正直頼みたかった」
「ヒョロくないです!」
「なんですかゴリマッチョ系男子って!」
「ははっ、悪い悪い。よし、じゃあこの未使用の弾丸を、まず握ってくれ」
「は、はあ?」
「そんでもって――そうだな、あっちの方角に、出来るだけ遠くへ放り投げてくれ」
「わ、わかりました!」
まだ若い(俺も充分若いが)タンクトップの似あうマッチョが、俺が指し示した方角――街へ向かうルートとは明後日の方向へとそれを投げた。木々の隙間をすり抜けて、それはあっという間に見えなくなる。
「よし、ナイススロー」
「――ちなみに、今投げたのはなんでしょうか?」
「ディアからもらった退魔弾」
「――は?」
「超強力で、超高額なダブル超のヤツだ」
「はぁああああああああああッッ!!?」
投げた張本人は、その顔を驚愕に染める。しかも、真っ青。そう言えば、こいつディアに思いっきり叱られてたな。
「ちょちょちょちょちょっと、狼山さん!?」
「フッ、安心しろ。最初から、投げるためと言ってある」
「心臓が縮み上がりましたよ――って、どういうこと、ですか?」
「簡単な話だ。奴らは特殊な能力を探知していると、現状考えられる、と言う事は聞いたな? そしてあの弾は、そう言う特殊な力の塊だ」
「な、なるほど――無人の囮、と言うわけですね?」
「そう言う事だ。どれくらい効力はあるかは知らねぇが、僅かな力も嗅ぎつけてくることを考えると、意味はある。さ、行くぞ。モタモタしてて、このチャンスを逃しちまうわけにはいかねぇしな」
――正直言うと、遊が一緒にいてくれた方が、色々察してくれて動きやすいんだがな。




