《第542話》『バシャール』
「うーわ、ありゃ大変だぜ」
ここは新生国家ラ・ムーの基地の一つ。日本の区域内にあるそこで俺は、監視モニターにて基地出入り口の様子を見ていた。 大きな両側スライドのみの空間のそこでは、人間共が数えきれないくらい集まって耳障りなエキゾーストノートを吹かせてやがる。それらに対してラ・ムーのロボットが応対しているが、当分この状況は収まることは無いだろう。
それを俺は眺めている。椅子に座り、足を組んで。いわゆる、高みの見物スタイルと言うヤツだ。
原因はまず間違いなく、数刻前の放送。ラ・ムーの管理下にある放送関連をどうジャックしたのかは知らないが、そうして流された放送により、人間共は取っ散らかっているのだ。
結果、街の幾らかに作られたトランスポーターを使い、奴らが今のこのように、基地へとホイールスピンする勢いでなだれ込んできている。
それにしてもまあ――なんとも情けない奴らか。
ラ・ムーが作りだした、異能や妖怪を徹底研究して作られたズル臭い武器を持ちながら、いざ奴らが反撃宣言をしてきた途端、この始末。
一応、骨のあるヤツら――ギリギリまでラ・ムーに屈服しなかった連中は、いつでもきやがれな姿勢なのだが、いわゆる一般中の一般、平々凡々なカメ共は泣きつくしか能が無いようだ。
他にも、敢えて手加減させた怪獣共を送り込み、返り討ちにされたと言うのもなども、ラムーへの不信感を作っている原因かもしれない。何にせよ、だ、
イライラする。全員引き潰してやりたい。
「冀羅、いけまセンヨ」
「――っ、相変わらず急に出てきやがるな」
俺より身長が高い上に前進真っ黒なローブ姿のそいつ。俺をラ・ムーに引き入れたヤツで、コイツの手引きで俺はより強い力を手に入れることができていた。
――あの時は人間ごときにすら後れを取ったが、度重なるチューンアップにより、今となってはあの鬼ババァすらも凌ぐ力を手にしたと自負している。
「で、何か用かよバシャール?」




