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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十七章
538/1022

《第537話》『疲労困憊。摩耗した神経』

「な、何を言って――!? 夜貴、何を弱気になっておるのだっ!」


 呉葉は驚いた様子で僕の方を見た。ディア先輩も、狼山先輩も、そして遊ちゃんまでもが目を見開いている。


「おいアンタ何言ってるんだ!?」

「そ、そうよ! 馬鹿じゃないの!?」


 同じくして避難してきた他の地区の平和維持継続室職員もまた、動揺した声をあげた。その声には、若干の震えとも思える様子がうかがえる。

 でも。それはどこか僕と同じ気持ちなのではないか、というモノを感じなくもない。


「貴様らは黙っていろ。何か理由があるのだ」

「今のは明らかに裏切り発言だろ! 誰かそいつを――」


「妾は、黙っていろ。と、言ったはずだが?」


「う――ッ!?」


 呉葉はあからさまに他所の職員を威圧した。そこまでしなくてもと思うが――あまり心や体力に余裕がないためなのかもしれない。


「――それで、お前は何を……? 流石の妾も、冗談を言い合えるほどの気分ではないのだがな――」

「僕だって、そんなつもりはないよ。けどさ、考えてみたら、さ。僕らはどうして、ラ・ムーと戦っているんだろう?」

「それは勿論、侵略に抗うためだ――! 暴力的な支配に対抗し、我らの尊厳を守るため――!」

「じゃあ、どうして侵略に抗わなければならなかったの?」

「それは、勿論――っ」

「勿論、皆を危険から守るため。だけど、どう? 少なくとも、表の世界の人々の生活と安全は、もはや約束されている」

「確かに奴らはそう言ったが! その確証はどこにもないではないか!」

「じゃあ聞くけど、僕らに襲い掛かって来た人たちは何なの?」

「っ、それは――」

「特殊な力で操られた様子も、洗脳を受けてる様子もない。偵察に行った人たちの話を聞く限り、今の状況は彼らの意思なんだよ!」

「――っ、……」

「本当は、皆も気が付いてるはずなんだ。だから、本来なら冗談みたいな話でも笑い飛ばせない。明らかに、動揺してる。――表の世界の人々がラ・ムーに絶対的信頼を置いてでもいなきゃ、こんな状況にはならないんだよ!」


 勿論、僕には表の世界だけでなく、裏の世界にだって守りたい者達はいる。

 ここに居る先輩たち。そして、必ずしも友好的ではないものの、それでも最低限の協調性を持ち合わせ、人間とはまた異なった良識を持つ妖怪たち。

 ――そして、他の誰でもない。僕の大切な奥さん、呉葉。


 だけど――もう、疲れた。疲れてしまったんだ。


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