《第530話》『巨鳥、墜つ』
「さっきアタシ、『飛べるのは卑怯だ』って難癖つけただろ?」
力の塊と言う足場を作り、それを力強く蹴って強引に空を飛ぶ。再び飛来する羽根を撃ち落とし、超音波攻撃を真っ二つにし、立体的に移動。少しずつではあるが、確実にフクロウへと近づいて行く。
そして――、
「悪いね。アレは取り消すよ」
距離を見計らい、その場で宙がえり。すぐ下を、追いかけてきていた羽根の一枚が通り過ぎる。
それを、思いっきり蹴飛ばしてやる。鉄の塊を蹴ったような、ずしりとした反発力を体感するが、悪魔パワーで身体強化を施した今のアタシにはなんてことない。
――結果、アタシへと突撃してきていた時とは比べ物にならない速度で、羽根のミサイルはフクロウへと向かう。
ギッ、ギュビョォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!
遅れて、フクロウの悲鳴めいた鳴き声が空気を震わせる。目論見通り。巨大な羽根が、フクロウの目玉に深々と突き刺さっていた。
一瞬ではあるが、フクロウの動きが乱れ、落ちるとはいかずともバランスを崩し空中でもがき出す。
そこへ突撃。身体に開店をかけられるよう足場を作り、零極刀を突き出してドリルのように接近する。
先ほど切りつけた時。銃撃したとき。本体を切った手ごたえが、まるでなかった。
それも当然だ。フクロウのあの大柄な身体は、その実、羽毛でおおわれているだけなのだから。
「そらそらそらそらそらそらそらそらそらァッッ!!」
使い慣れた刀。自信たっぷりの剣術で、フクロウの上を駆け回り、丸裸にしていく。一方のフクロウは、目に突き刺さった羽根に未だ苦戦している。
――その間、おおよそ10秒足らず。フクロウの身体は、すっきりと細身な姿になった。
「これで、刃も弾丸も届かせられるね」
翼まではもげなかった。だが、未だ混乱した理性の無い動物なぞ、どうにでもなる。
アタシのお祭り人生は、守られた。




