《第529話》『一度動きが分かれば、どうとでもなるのさ』
「さて、こっからは本気でやろうじゃないか」
周囲に降り注ぐのは雨ではない。今しがたアタシを生き埋めにしていた、瓦礫の破片。一つ一つ退かすのも面倒だったので、悪魔的エネルギーを全身から放ち、吹き飛ばしてやったのだ。
――何? 悪魔的エネルギーって何、だって? そりゃあもちろん、悪魔パワーに決まってるじゃないか。
ボッ、ボォオオオオ――――ッッ、
アタシの声に気が付いたのか、フクロウのヤツがこちらを振り返るのが確認できた。沈黙したと思いこみ、他を狙おうとしていたのかもしれない。
フクロウが、分厚い声を放つ。先ほどの、音による攻撃と同種のモノか。
「ドらァッッ!!」
零極刀を全力で振り下ろす。この刀は、あらゆる超常的な力を、物理的なモノのように斬り裂くことができる。
二つに割れた怪音波は、アタシの横をすり抜けて、周囲だけに破壊をもたらした。
表情のないフクロウへと向かって、跳躍。高さが足りない分は、足もとに力の塊を作り、それを足がかりにしてさらに上へ。それを繰り返すこと数回。
その間、フクロウの方はまたもや無数の羽根を飛ばしてきた。鋭い先端が、全てアタシの方へと向かってくる。
念力か何かで操っているかのように正確なそれ。事実、何らかの力でコントロールしているのは間違いないだろう。
「さっきはマトモにもらっちまったが、同じドジを二度も踏むほど甘くはないよ」
刀を一時仕舞い、二丁の銃の引き金に一指し指をかけつつ、二つのマガジンを両手それぞれ小指と薬指に挟んで取り出す。
マガジンを互いの手へと放物線起動で放り投げ、空の弾倉を捨てつつ装填。狙いをつけて、一気に乱れ撃つ。
あのフクロウからは、妖怪と同じ気配を感じる。それを打ち消し、弾けさせる退魔弾が、効き目がないハズがない。
飛んでくる羽根を、撃って、撃って、撃ち落とす。それなりに正確な射撃が、妖気を帯びた羽根を片っ端から破壊する。
――この弾、一発一発がそこそこ強力な化け物を一撃粉砕する、高価な代物だ。まあ、特別に支給されているモノだから、アタシが金出すわけじゃないけどね!
一つ21発入る弾倉半分程を使いきり、残る羽根は一枚。身を翻し、貫かれる寸前でそれを回避する。
さらに、それを踏み台にして、フクロウの片目へと跳躍。羽根が、アタシを追い迫ってくる。フクロウは何かを察知したのか、滞空していた場所から離れてゆく。
――だが、遅い……ッ!




