《第527話》『銀に輝く死の翼』
アタシは、刀を支えにして立ち上がった。
周囲には、逃げ惑う人々。アイツら、ちゃんと逃げてるだろうか。何も言わずに飛び出してきてしまったが、正直こう言う手合いは荷が重いだろうと思ってのことだ。
特にコーハイと呉葉ちんとか。コーハイは事務仕事の方が得意だし、呉葉ちんはあんな様子。狼山と、そのパートナーの遊は人間相手がメインだし。
――えっと、あと一人誰かいたような気がする。まあいい、考えるよりも、まずは、
ボ、ボォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!
あのフクロウ。アレを、何とかしないといけない。
「しっかし、どうするかねぇ――」
まずは、逃げ惑う人々から引き離す。退魔拳銃一丁を取り出し、フクロウ向けてぶっぱなしながら跳躍。立ち並ぶビルの上に昇り、移ってゆく。
フクロウが、嘴を突き出すようにして鳴き声を上げた。
「っ、なんだい――!?」
危険を直感的に察知し、一際大きく跳び上がる。人間と悪魔のハーフたるアタシにとって、そんなことは素でわけもなかったが――、
先ほど立っていたビルが、一瞬細かく振動し、木っ端みじんに砕け散った。
「く――!?」
飛んできた破片が頬を掠り、血液が散る。
鳴き声――音を一点集中させた攻撃、なのだろうか? オマケに――、
「羽根が――!」
舞い散ったそれがひらりと上空に舞うと、一斉にこちらめがけて飛翔してきた。
それは、まるで無数のダーツの用。しかし、その大きさは並大抵ではない。
大粒の雨のごときそれが、アタシもろとも街を破壊しようとしていた。




