表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十七章
527/1022

《第526話》『飲まなきゃやってらんないね』

「オラァッッ!!」


 アタシは、巨大フクロウ向けて刀を振るった。この世界では決して作ることのできない、「零極刀れいぎょくとう」の刃が羽毛を斬り裂いた。

 ――しかし、結果は斬られた羽根の端が舞い散るのみ。傷を負った様子もなく、相変わらず悠然と、そいつは飛び続けている。


 続けて、刀から一瞬手を離し、懐に仕舞っていた二丁拳銃の弾を全弾ぶち込む。

 合計42発。普通の妖怪・怪物・悪魔の類なら、蜂の巣となっているであろうが、灰色の毛並みに飲みこまれた退魔弾は、奈落の底に落とした石のように、何の反応も返さなかった。


「うーわ、なんだこれ、なんだこれ」


 フクロウの超巨体が、一瞬にして遠ざかる。何が起こったのかとも思ったが、何のことは無い。ただ、空の彼方に飛翔しただけだ。

瞬きだけで物理的に人を圧殺できそうな相貌は、アタシをじっと見つめている。その無感情な瞳に、思わず背筋が凍った。


「こ、こっちは跳べはしても飛べはしないんだ! 卑怯じゃないかい!」


 そんな文句を、聞き入れてくれる相手では当然無い。空高く舞い上がったフクロウが、こちらへと向かって猛接近。今まで体感したことのないパワーで、蹴り飛ばしてくれた。


「――っ、ぐ、く……、」


 したたかに背中をアスファルトの道路に打ち付け、瓦礫と砂ぼこりが周囲に飛散する。

 護符が無ければ、間違いなく即死していただろう。蹴りの直撃を零極刀で受け流したつもりでも、あまりに高い攻撃力のせいで逸らし切れない。


 フクロウはどうやら、完全にアタシに狙いをつけたようで、真上で羽ばたいている。

 自分が蟻となって、象と戦っている気分になって来た。足元を這うあの昆虫には、世界はきっとこんな奴らだらけなのだろうと思うと、少し同情できる気がした。


 ――有体に言って、恐ろしく絶望的だった。


「あー、お酒欲しくなってきた――」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ