《第522話》『爆音弾けた後の静けさ』
「くそっ、話と違うじゃねぇかよ――ッ! 人間なんざに、どうして……ッ」
「話――?」
冀羅は苦々しげな顔で膝を尽きながら悪態をつく。その思わせぶりは、やはりと言うか、間違いなく謎の侵略者との協力関係にあることを示していた。
「冀羅――貴様、何を考えてい、る……」
そんな彼に、呉葉は困惑の入り混じった様子で問いかける。そう簡単に、先ほどの反動は抜けきらないらしい。
「なぜ、あのような奴ら、と、繋がっているのだ――!」
「…………」
「貴様、自分のしようとしていたことが分かって、いるの、か――! あんなモノ、地上に落ちれば人間だけではな、い。その裏側でひっそり、と、静かに生きる同胞達までも、を、焼き尽くしてしまうのだ、ぞ……っ」
呉葉曰く、全ての妖怪が他の妖怪に対して仲間意識を持っているわけではないと言う。
しかし、そのように言った彼女が、わざわざそんな話を持ち出した、と言う事はすなわち。冀羅は同じ妖怪達を、少なくともむやみやたらに傷つける者ではないことを示していた。
「う、るせぇ、な――ッ!」
「ぐ、冀羅――ッ」
しかし、それに応えることなく。彼の周囲に、炎が爆発するように発生した。
直感だけど、逃げようとしている。僕にはそう思えた。分が悪いからではない。それとは別の何かが理由で――、
「く――!?」
「逃がさないよ、情報源」
それまで狼山先輩に任せていたディア先輩が飛び出す。――が、
「ぬォあああああああああああああああああああああッッ!!」
「ぐっ、熱ッ!?」
気が付けば、冀羅の姿は影も形もなくなっていた。
「――逃げ足だけは、いっちょ前だね」




