《第521話》『精鋭』
「――フツーの弾丸じゃ、効き目が薄いか」
「ってェ――」
狼山先輩がいつの間にか構えていたダークシルバーの拳銃――リボルバー式のピストルの先端から、煙が上がっている。
「っ、この俺様が、ただ拳銃の弾6発食らったくらいで倒れるかよ――!」
「流石に、人間とは違うってことは理解できたぜ。一発一発、喰らった弾の数まで把握してるとはな」
発砲音は一発のように聞こえるが、狼山先輩はリボルバー内の玉を全て撃ち尽くしていた。僕も最初知った時は驚いたが、このヒトも充分人間離れしている。
「おいディア、退魔用の拳銃貸してくれ」
と、狼山先輩は自分のポケットを漁りながら。しかも、「予備の弾どこやったっけな」とか言っている。
「えぇ――? アンタに貸したら、壊れて返ってくるから嫌なんだけどね」
「仕方ねぇだろ。俺はそもそも、妖怪だのなんだのを普段は担当してるワケじゃねぇんだ。おっと、ここに入ってたか」
「余裕ブッ扱いてくっちゃべってんじゃねぇえええええええッッ!!」
冀羅が地面を蹴った衝撃故か、ぼわりと粉塵が舞い踊る。
「早撃ちしかできねぇワケじゃねぇぞ、俺は」
「そんな弾、もう二度と――おがっ!?」
一発。
「ぼわっ!?」
また一発。
「ぎへっ!?」
さらに一発。いつの間に弾を装填したのか。しかも、その全てが冀羅に命中している。
「な、なんでだ!? 弾が見えてるのに避けらんね――どほっ!?」
「簡単な話だ」
容赦なく一発。
「ただ、お前の動く先に撃ってるだけなんだよ」
「に、人間のクセに俺様の動きを――!? はごっ!? ぎげっ!?」
一発。一発。相手が相手であるためか、致命傷には至っていないが。冀羅はよろめき、尻餅をついた。
「調子に乗って来たのが間違いだったな。お前なんざ、俺一人で充分だぜ」




