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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十七章
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《第519話》『オーバーヒート』

 金髪を炎のように逆立てたその男は、持ち前の長身からこちらを見下ろしている。彼の周囲には強い邪気と妖気が渦を巻いて混ざり合っており、強烈な威圧感となって僕らを押さえつけようとしていた。


「冀羅――妙、に、元気がいい、な」

「そりゃァもう、こっちの思惑通りに事が運んでっからなァ。どうだ、少しは楽しめたんじゃねぇのか? 俺様が操ってた、ミサイルとの耐久レース!」

「どういうこと――?」

「簡単よォ! ちょっと軌道修正のためにガツガツ蹴飛ばしてただけさァ! ただそれだけなのに、ババァは無駄にでけぇ力使ってオーバーブロー! これを、ざまァ無しと言わずしてなんて言うんだ?」

「っ、なんてことを――! 君が誰だか知らないけど、呉葉は僕らやこの街の皆を守るために……ッ」

「ンだよ人間。ギャンギャン吹かしやがって、うるせぇな」

「……――ッ、」


 獰猛な狼のごとき赤い瞳に一睨みされただけで、本能が「ここから脱兎のごとく逃げろ」と警鐘を鳴らす。


「どした? 足を空転させながら逃げねぇのかよ?」

「…………」


 けれど、逃げるわけにはいかない。この口ぶり、どういう関係か知らないが、呉葉を完全に敵視している。すなわち、ここで僕が離れたりすれば、消耗してしまった呉葉に危険が及ぶ。


「まァいいか。だったら雑魚ごとぶっ飛ばすまでよ――!」

「……――っ!」


 冀羅、と呼ばれるその男が一歩踏み出してくる。

 仮にも平和維持継続室の一員であるのに、この強大な相手に対して何もできない自分が、あまりにも情けない。

 けれど、盾になるくらいは。二歩目を踏み出し、さらに三歩目で飛び掛かってくるその男を目にした僕は、呉葉を庇うために覆いかぶさった。


「ッ、く――ッ!」


 ――しかし、痛打は来なかった。代わりに、耳には風を切るような音が遠ざかって入ってくる。


「お前、ここをどこだと思ってんだ?」

「…………」


 続けざまに僕が感じ取ったのは、狼山先輩の声と、遊ちゃんの怒気を孕んだ気配だった。


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