《第516話》『核の一撃』
ゴ、ギィィイイイイイ――ッッ……、と、扉がきしみ開くような音。それが響くは何処か。
「上――何か、ある、ぞ……?」
呉葉が、青ざめた表情で確認するようにもう一度。一瞬、僕も先輩も所長も。何を言っているのか分からなかったようで、一秒前後思考停止した。
だが、その時間の中で。これまで起こった出来事が繋ぎ合わされる。それが導き出した答え。それを確認すべく、全員が弾かれるようにして窓際に走った。
何も無いハズの空にぽっかりと、大穴が開いていた。
大きさのほどは、ビル一件を縦にして飲みこませられそうなほどだろうか。直径何10mかという、巨大な穴。
――その穴から、何かが降りてくる。ロケットとも違う、先端の尖った何かが。
『諸君らの決断、我々としても残念に思う。どうやら、賢明な判断を下すには至らなかったようだ』
テレビから、またあの声。相も変わらず、顔のわからぬ誰かがこちらを向いている。
『だが我々は慈悲深い。諸君らに、もう幾ばくか考えるチャンスを与えよう。よって我々は――、』
天から降りてくるそれは――、
『核ミサイルを放つことにした。この一発の鉄槌が、きつけとなるよう祈っている』
「っ、ふざけるな――ッ!」
その全貌を露わにし、落ちてくる核ミサイル。遅れてやってきた呉葉が窓から身を乗り出し、鋭い眼力で睨みつけた。
現れる、空間の裂け目。呉葉の生じさせたそれに、ミサイルが飲みこまれる。
「ゴミは、持ち帰るのが基本だぞ――!」
そしてもう一つ現れた空間の裂け目。そこから、先ほどのミサイルが飛び出す。最初に空いた、空の穴へと向かって。
このままいけば、ミサイルは元来た場所に――呉葉の推論道理なら、発射した主へと返されるはず。この辺り一帯の地区は、着弾を免れることとなる。
「っ、な、なんだと――?」
――だが、ミサイルは何度も殴られたかのごとく、その向きをガクン、ガクンと修正し始めた。




