《第512話》『ボディランゲージが通用するときもある』
「ッ、……――ッ! ――……ッ!」
「黙んな。言い訳なんか聞きたかないよ」
「……ッ、――ッ、……――ッ!」
「だからっつって、ここで暴れてどうするってんだい?」
ディア先輩は肩で支えていた刀を、ブオンと言う音と共に、前へと突き出した。
「だから言ってんだろ? 文句があンならアタシが相手してやるってさ」
「…………」
「…………」
「そうそう、分かりゃいいのさ」
格の違い、と言うヤツなのだろうか。ディア先輩の一喝に場は静まり返り、争っていた両社は何事か呟きながら引き下がっていた。
「ふぅ――……」
「あっ、ディア先輩。す、すごいですね――流石、です」
「見苦しくて見てられなかっただけだけどね」
「というかお前、ロシア語とかドイツ語分かったんだな」
「えっ、分かんないけど――」
「どう見てもconversation、会話してるようだったのに――!」
「ついでに英語も分からん!」
「日本語だけ分かるハーフって、芸能人にいたような――」
それでよく場が収まったものだと本気で感心しなくもないが、一方で彼女らしくもある気がする。
だけど、今からこんな様子では、いざとなった時どうなるのかという不安が僕の中で渦を巻く。実際に対応する際、これでは本気で自滅してしまいかねない。
「ま、なるようにしかならないさ。多分、一つ一つ纏めてる時間なんざありゃしないんだから」
そんな僕の思いを悟ったように、ディア先輩が言う。
――そう、もう攻撃は始まっているのだ。ぶっつけ本番、アドリブ対応。
うまく応対できるよう、祈るしかない。




