《第509話》『ないすとぅーみーちゅー!』
「Hey! YouたちがJapanからのAgent、デスネー!」
様々な言語が飛び交い、様々な国の人たちが集まるホールで、僕やディア先輩、狼山先輩は突然声をかけられた。
世界的な襲撃事件が起こったことで、文字通り世界中の国々の間で、対策会議が行われることになった。しかしなかなか意見が纏まる様子はなく、事態への対処、その話は停滞の一途をたどっているのが現状である。
その一方、政府からはどちらかと言うと独立した立場にある平和維持継続室は、世界中の「近似した組織」との間で、正体不明の、ともすれば「こちら」絡みの可能性もあるテロリストへの対応方法を話し合うことを決定した。
それは、各国の「そう言った組織」もまた同じ意見であり――まあ、要するに、僕らもまた、互いのことをある程度理解しておくと言う理由のもと、集められている次第である。
「――だ、誰だい? このコッテコテ過ぎるせいで一週回ってエセっぽく見える男は?」
「なんで僕に聞くんですか――!」
「ほら、アンタ変な知り合い多いし――。ルー語話すヤツが居てもおかしくないとおもって」
「ディア、流石にそいつは偏見と言うものだぜ。――俺も一瞬、思ったけどよ」
「ふ、二人そろって、もーっ!」
「Oh! MeのJapanese、もしかしてMistakeしてマシタか!?」
「中途半端に英語混ぜるから困惑してんだよこっちは!」
僕たちの目の前に現れた男性。長い銀髪は後ろで纏められ馬の尻尾のよう。瞳の色は本物の宝石のように輝くエメラルドグリーン。グレーのスーツにストライプ柄のネクタイと言った出で立ちは、優良企業の会社員を思わせなくもない。
――それにしても、身長高いなぁ。190cmくらい? 何食べたらあんな風に大きくなれるんだろう?
「Sorry Sorry! Me、JapaneseをStudyしたばかりなのデース! よって、Japaneseが正しくないこともあるでしょうが、Forgiveをお願いしマース!」
「は、はあ――」
「というわけで、これ、MeのBusiness Cardデース!」
名刺、と言っているのだろう。なぜか、代表して僕がそれを受け取ることに。
そこには、「とむ とーます とーるまん。あめりかじん」と、彼自身をデフォルメした姿と共に、そう書かれていた。
――どうしてひらがななんだろう。




