《第503話》『人類の解放』
『さて、「新生国家ラ・ムー」の軍事力はご覧いただいた通り。此度の攻撃では、敢えて核を使用せずに攻撃を行わせていただいた』
あくまで淡々と言葉を続けるその人物。感情の類は相変わらず感じられない。喜びも、怒りも。
『軍事力を知らしめた後は、要求をさせていただこう。我々の要求は、すなわちこの地球上の、全国家の解体である』
「国家の――」
「解体だって?」
『我々が最初の攻撃で核を使用しなかったのは、我々の目的は殺戮ではないことを示すためだ。だが、敢えて人口の多い都市を狙ったのは、破壊と殺人を厭わないことを意味している』
「…………」
『繰り返す。地球上の全人類は、国家という枠組みから解き放たれよ。国家は民衆全てを解き放て。新生国家ラ・ムーは、全ての人間が国と言う纏まりを無くすことを望む』
「一体、何を考えているのでしょう――?」
所長の声には応えることなく、テレビの画面には砂嵐。すぐ復活した画面には、困惑し、沈黙したニュースキャスターたちが映し出される。
「――この様子だと、さらに攻撃が続きそうだねぇ」
「しかも、どこから飛んできたのかさっぱりわからないミサイル、と」
「そのミサイルのカラクリに関しては、一応推測できなくもないぞ」
「なんですって!? それはどういう――……って、」
この部屋にはいないハズの人物の声。それに気が付き、全員がその方向を見る。
「よっ、と言っていられる状況でもないか」
「く、呉葉ちん!?」
丁度僕の机に腰かけた呉葉が、片手をあげて挨拶をしてきた。




