《第499話》『いまこそ、消火器がその力を発揮する時!』
「あ、カレーだ」
帰ってくると、食卓の上には見紛うことなくカレーが。しかし――、
「――でもなんで10皿?」
「ふっふっふ、今日の夕食はちょいと趣向を凝らしてみたのだ」
何故か、小皿に盛られたカレーライスが、なんと10皿。皆すべて一様に同じ色、かつおなじ盛られ方。こんな風に並んだカレーなど、僕は初めて見た。本場インドくらいではなかろうか。ついでに、どこにこれだけのお皿があったのか。
「名付けて、ロシアンカレー!」
「うっわ、名前だけで何をしたいのか容易に想像できる!?」
「一応説明すると、これら全て辛さの度合いが異なっているのだが、そのうちの一つは別次元、泣く子がさらに泣きわめく鬼神級に辛いカレーなのだ」
「た、食べ物で遊んじゃだめだよぉ――」
「およそ、コ〇イチの10辛の倍だ!」
呉葉は、勿論当たったヤツは全て完食がルールだと言った。そりゃあそうでしょうね! こう言うのにはお約束だろう。だろうとも。
「――全部同じ色なんですけど」
「辛さを変えながらも同じ色にするのに苦労しました! 作った妾ですらどれがどれだか覚えておらぬが、不正防止のために夜貴が先に5皿選ぶといい。あ、匂い嗅ぐのも禁止だぞ」
「全くのノーヒント――辛党だったら喜んで超辛を引きに行くところだけど」
「らっきょうと福伸付けの用意は充分だ! さあ、見事丁度いい辛さを引き当て、呉葉様特性カレーを味わうことができるか!」
そうして選び終わり。まず僕からカレーを一口いただく。
「食事をこんなにドキドキしながら食べるなんて初めてだよ――もぐ……あ、」
「どうだ!?」
「あ、おいしい。丁度いい辛みが、マイルドに僕の舌を包んでくれる――」
「何せ、妾の自信作だからな!」
「――だったら、こんなことせず普通に出せばよかったんじゃ」
「やりたくなったのだから仕方なかろう! さあ、妾の番だ!」
呉葉は自身の分をスプーンですくい、一口。
「――どう?」
「…………」
「――呉葉?」
「ぼァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!?」
「わぁーーーっ!? ボヤ騒ぎボヤ騒ぎ!?」




