《第四十九話》『過去と現在の衝突』
妾は、自分と同じ姿でかつジャック・オー・ランタンをかぶせたそいつと対峙しながら、夜貴との間に割って入った。
「全く、様子を見ておったら、いったい何をやっているのだ?」
「な、何って――それより、どこから……」
「ふふん、妾をそう簡単に撒けると思ったら大間違いだぞ?」
「――あと、あのカボチャは何?」
「何って、今日はハロウィンだろうが」
「雑! なんだかもう適当臭が半端ないよ!?」
道に落ちてたやつで危機を脱したのだから、細かいことは良いだろうに。大体、あれが夜貴と会ったばかりの妾だというのなら、もっと緊張感を持つべきだ。
「あ、あんた、いったい何者よ!?」
「うん? ああ、夜貴の『友人』か。妾が何者だと? この男の『妻』に決まっているではないか?」
「つ、妻ァ!?」
浮気などではなく、未だにこいつが夜貴と仕事の関係ということを知った妾は、余裕たっぷりの笑みを見せつけてやる。ぬははははっ、おっかしいものよ!
「夜貴! どう言うこと!? 奥さんって、訳が分からないわよ説明してよ!?」
「ぐ、ぐるじいっで! やめでっ! じまるっ!」
やはり、この藍妃とか言う女は一方的に夜貴のことを好いていたらしいな。どうだ、うらやましかろ? うらやましかろ? どうあがいても、夜貴は既に妾のモノなのだからな!
「おのれよくもやってくれたなああああああああああああああああああああああッッ!!」
「――っ!」
かぼちゃ頭を外した偽物の妾が、拳を振りかざして襲い掛かってきた。それに対し、妾も拳をつきだして対応する。
「うわ――!?」
「くぅ――!?」
衝突した全力の拳同士が、周囲の空気を震わせる。
巻き起こった波動は、しばらく体験していなかった衝撃を巻き起こしていった。それは床に、壁にと断続的な衝撃を与えていき、そして――、
古びたこの建物を一瞬のうちに破壊しつくした。




