《第四話》『夏場に熱い湯などは入れない』
「ふぃー……」
夏の暑い一日を洗い流すシャワーは、思わず声が出てしまうモノだ。
部屋はエアコンをかけていたために、汗自体は乾いてしまっている。しかし、まとわりついた塩気などが取れるわけでなく、こうやって流すことはとても気持ちいい。
「夜貴、入るぞ?」
「へァッ!?」
思いもよらない言葉に振り返るのと同時。風呂場の扉が開き、妻である美しい鬼の裸体が姿を現した!
「ギャ、ギャーッ!?」
「何を初々しい乙女みたいな声を上げているんだ」
「だ、だってぇっ!!」
僕は目を覆いながら、呉葉への文句を言う。も、もう少し、少なくとも見た目は女の子なんだから、恥じらいと言うモノをぉ!
「だっても何も、妾とお前は夫婦同士だろう? 裸のつきあいくらい、当然であろう?」
「そ、そりゃあそうかもしれないけどさぁ――」
そうは言っても、結婚に至るまでの期間自体とても短かく、かつそれまで女の子とのお付き合いした経験すら、僕にはない。
「というか、呉葉は僕をからかうつもりで入ってきてるでしょ?」
「そんなことはないぞ。妾は単純に、夫婦の絆をより強固にしようとしているまでだ」
「そのオーバーなアクセントの付け方が、疑いに拍車をかけてるんだけど?」
「失礼な奴め。そうだ、いっそこの際だ」
「な、何――?」
「『裸の突き愛』の方も今からするか?」
「やっぱりからかいに来たんじゃないか!?」