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《第496話》『しすぎな準備』
「夜貴、少し相談があるのだが――」
「ど、どうしたの?」
勤務から帰ってくると、妙に深刻な顔をした呉葉が、リビングのソファに座って待っていた。この間の乾パンを食べ過ぎた時に、顔が似て居なくもない。
「そ、それが、それがな?」
「う、うん――」
「しょ、商店街の福引が当たったのだ」
拍子抜けした。
「な、なんだ、何か大変なことが起こったのかと思ったよ」
「いや、大変なことなのだ――」
「あ、普段当たらないから当たってびっくりしたとか? もしかして、ハワイ旅行でも当たっちゃったり――?」
「そうではない、そうではないのだ――」
呉葉は立ち上がると、僕の手を引いて外に出た。そしてそのまま、物置へと向かう。
そうして呉葉は、鍵を開けて引き戸を開いた。
視界が、真っ赤に染まった。
「当たったのは消火器一年分――数にして、365個だ……」
「毎日ボヤ騒ぎを起こせと!?」




