《第494話》『期限切れの悩み』
「うん? どうしたのそれ?」
「ああ、これか。防災用品の確認をしていたら、賞味期限切れ二日前だったのでな」
お仕事から帰ってくると、食卓の上に乾パンの缶が乗せられていた。しかし――、
「――多くない?」
「うむ、妾も正直、買いすぎたな~と思っていたところだ」
その缶が、ざっと30。そのうち3缶は空けられ、加えて1缶は半分ほどまで減っている。
「金平糖入りでも、げぷっ、正直食べきれる気がせん――期限は明後日までだと言うのに」
「そんな別に、無理に明後日までに食べきろうとしなくても――消費期限じゃなくて、賞味期限なんでしょ?」
「それはそうなんだが、おいしく食べられる期限と定められているのにそれを過ぎてしまうのがもったいなくてな。ポテチとか、期限過ぎて居たら悔しくなるだろう?」
「それはそうだけど――」
限度、と言うモノがある。というか、本人も言った通り、この非常食は買いすぎとも思わなくもない。まあ、何かあった時の食糧事情がどうなるかは分からないので、実のところやりすぎ、と一概には言えないのであるが。
「新しいのは買ってきたの?」
「うむ。流石に6缶に留めておいた」
「それにしても、そんなに食べたら――呉葉は夕食はつらそうだね……」
「安心しろ、夜貴の分の夕食はちゃんと作るから」
「うん? 乾パン食べなくていいの?」
「ふっ、妾はお前の奥さんだぞ? 旦那の食をしっかりサポートするのも、妾自身の役目だ」
そうして出てきた、今日の夕食。
なんと! 乾パンで作られたチョコクランチでした!
――まるで3時のおやつみたいだ。




