《第489話》『私設スキー場作成計画』
「よし、夜貴。今からスキーに行こう」
「えっ、何言ってるの?」
「ちょっとその返しは辛辣ではないか!?」
いつ用意していたのか、二人分のスキー板を持った呉葉の発言に、思わずキツイ言い方になってしまった。
だがまあ、それも致し方ないことだと同情してほしい。ついこの間、壁の修理と新しいパソコンのために、結構お金を使ったばかりなのである。勿論、呉葉のせいで。
「こほん――まあ、いつもの気まぐれで、スキーに行きたくなった、というわけだ」
「自覚あったんだ――でも、いきなり言われても、スキー場は結構遠いよ?」
二つくらい県をまたぐために、しっかり滑る時間を確保するのであれば、まだ暗いうちから家を出なければならない。お泊りならともかく、明日は僕だってお仕事あるし。
「ふっふっふ、そう言うと思ってな。手立ては講じておいた」
「え――?」
「窓の外を見てみるがいい!」
呉葉に言われるままに、僕は彼女の指示した窓から景色を覗く。別に今日は晴天だし、むしろ冬であることが怪しくなるほど日差しが暖かなのだが――、
何故か、近場の山が真っ白に染まっていた。
「え、えっと……一応聞くけど、なにあれ?」
「妾の知り合いには、雪を降らせる妖怪がいるのだがな?」
「うん」
「山の材木をこの手で刈り取って、その後そいつに雪を降らせてもらった!」
「環境破壊反対!」
「環境破壊は気持ちいいZOY!」
「馬鹿言ってんじゃないよもう!?」
その後、主に呉葉は存分にスキーを楽しんだ。憐れな禿山が、再びふさふさになることは無かったことを、ここに明記しておく。




