《第486話》『リアルでできる異世界転生?』
「夜貴、妾は異世界転生しようと思う!」
「流行ってるの?」
「インフルエンザのように言うでないっ! 手洗いうがいはしっかりな!」
と言う話は、僕が朝起きてきて始められた話である。今日の呉葉は妙に早起きだ。
「――で、どしたの呉葉。突然そんなこと言いだして」
「うむ。近年、創作作品では、そう言う傾向の話が流行っているだろう?」
「やっぱり流行ってるんじゃないか」
「というわけで、妾も異世界に行ってみようと思ってな」
「というわけも、こう言うわけも、藪から棒に言われたんですけど――というか、そもそも異世界ってなんだよ……」
「まるで哲学のようだな、『異世界とは何か』とは。まあ、それは今はいい。そんなワケで、妾は今から異世界へと赴く!」
「――っ!」
「この、VRを使って! じゃじゃーん!」
「――何それ?」
「VR系ゲームを楽しむためのゴーグルに決まっているだろう! 遅れているなお前は!」
「知らないモノはしょうがないじゃないか! ――というか、なんだ。ゲームの話なんだね」
「ただのゲームと侮るなかれ、ゴーグルに景色を映し出すことで、仮想現実を作りだし、その中で遊ぶことができるのだ! 別に、ダイマしてるわけじゃないぞ!」
「相変わらず、新しいモノ好きだね――」
「こいつをつけて、コントローラーを持って、電源をつけてだな――お、きたきた」
「全く、そんなのばかり買って――いくらしたの?」
「へ? あ、ああ。あー、うん」
「はぁ――しばらくは戻ってきそうにないな」
そして、そのわずか数分後の出来事である。
「残弾が!? おのれクソゾンビめェ!」
「っ!?」
ゴーグルをつけたままの呉葉が、拳を振るってテレビと壁を破壊したのは。




