《第483話》『戻るべき、しかし戻りたくない未来』
「謳葉――」
「ねえ活葉、わたしたちはなんのためにきたの?」
「…………」
「わたしたちは、みらいをよくするために――じゃきのかげを、うまれたそのときにやっつけるために、このじだいへとおくりこまれてきたんだよ?」
「…………」
「だから、わたしたちはかえるべきところへかえらなきゃいけないんだよっ! ここは、ほんらいわたしたちのいるべきじだいじゃないの! かしこい活葉なら、そんなのわかって――、」
「分かるわけないじゃないッ!」
「――っ!」
「確かに私たちは、あの邪気の塊を屠るために送り込まれてきた。それを受けたのは、おとーさんや、おかーさんが死んでしまう未来を無かったことにできると思ったからよ! けど、蓋を開けてみれば何よ!? 未来の結果が増えるだけで、私たちの時代は一切変わってないじゃない!」
「…………」
「そんなの、聞いてない――! 聞いてないわよ! 詐欺じゃない! わたしたちは道摩と邪気の影に騙されたのよ!? 何で、何でそんな未来に帰らなくちゃならないの!? わたし、間違ったこと言ってる!?」
普段の乏しい表情を崩し、活葉は叫ぶ。
彼女の言ったことは全て真実。結局のところ、今のこの時間軸では未来の危険は去ったが、それは、本来双子の意図していたことではない。
しかも、彼女らを送り込んだのは平和維持継続室そのもの。そして、それを操るのは道摩。さらに、道摩はそれを承知で、しかも過去の自分に双子を「つなぎ」として取り込むために送り込んだのだ。
「――そうだな。お前の言う通りだ」
すると、呉葉は。未来の娘の訴えを見ていた鬼神は、静かに口を開いた。
「ならば、妾もこれからお前たちと共に未来へと赴き、その全てを完膚なきまでに破壊しつくしてやろうか?」




