《第477話》『大掃除はお済になりましたか?』
ここは、病院内にある倉庫。医療機器や道具が仕舞われている、その部屋の一角で、ひそひそとした話し声が。
「けひひひひっ、今度はマヨネーズまみれにしてやるべ――!」
「おい、もう止しとけよ――引き際と言うモノが、世の中には重要……」
「うるさいっぺ! 舐められたままでは、目立たぬ者はただの目立たぬ者に――」
「とうとうつかんだぞー! あくまのよーないんぼーのしょうこをー!」
「何ッ!?」
そこへのりこむ、わたしたち! どーんといろいろぶっこわして、いちれんのそーどーのはんにんを、このりょうめでかくにんする。
「どこかで聞いたようなセリフね謳葉。でも、遂に見つけたわよ」
「お、お前たちは――!?」
「おとーさんのおねがいどーり! いたずらざんまいのたぬきをとっちめにきた、」
「正義の」
「ししゃだよっ!」
それにしても謳葉、ノリノリである。わたしは恥ずかしいからやらないけど。――ホントよ。恥ずかしいから、いかにも「びしっ」とか鳴りそうな指さしを、わたしはしないの。
「くっ、だがそう易々と諦めるおらでは――」
「つっかまえた!」
「何ィ!?」
のんびりやってるあいだに、わたしはたぬきのおんなのこをとりおさえる。ろーやまさんは――まあ、じゃまするきはないみたいだしいーや。
「くっ、かくなる上は――遊! 遊! こいつらをなんとかするっぺよ!」
「アイツならとっくに逃げたよ」
「遊の裏切りものォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
「あなたが何を言っているのかわからないけど――おとーさんにお願いされた以上、わたしたちには捕まえる義務があるの」
そうしてわたしは、彼女の使おうとしていたマヨネーズを取り出す。
「な、何をするつもりだべ!?」
「いたずらしてもいーのは、じぶんがされるかくごがあるやつだけー! なんだよっ」
大晦日。大掃除は、完了した。




