《第474話》『それはまるでコンピュータのような』
「は、あ――?」
言っている意味が分からなかった。いや、それはまあ。結婚すると言う事は縁を結ぶと言うことで、一つの絆。少なくとも、争うために行うモノではないというのは分かるが。
「別に、夜貴が妾のことを愛していないとか、そう言う事を言っているのではないぞ」
呉葉は、そのまま話を続ける。
「なんと言うべきか。そうだな――ヤツなりに平和と言うモノを探究した結果、妾を愛すという結論に立った、と言うべきなのだろうか。いや、これも違うか。少なくとも、探究などと言えるほど小賢しいことは考えまい。あいつはどこまでもまっすぐだからな」
「言ってる意味が、いまいちよく分からないわ。なんで説明するアンタの方が、色々曖昧なこと言ってるのよ」
「――そうだな。妾にも、その自覚はある」
呉葉は一度目を閉じ、静かに一つ一つ確かめるように呼吸を繰り返した。それは、何かを準備するかのようで、これから自分が口にすることを、恐れているかのようでもあった。
自分なぞよりも、強力な力を持った妖怪が、である。
――そして、意を決した様子で口を開く。
「あいつは――夜貴は。『平和』という結果を導く最善手を、自動的に導くよう作られている」
「――は? ……ちょっと待ちなさいよ、当たり前でしょ? 平和維持継続室に所属している以上、平和のために働くことは当然じゃない」
「違う。そのような、表面的なことを妾は言っているのではない」
忌々し気に、そして、少々の苦々しさを孕み。言葉を紡ぐ。
「なんの意識もせず導き出せるよう、根本的に思考を強制させられているのだ」




