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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十四章
474/1022

《第473話》『愛することは、ただ押し付け合うばかりではない』

「――さて、先ほどは取り乱して悪かったな」


 談話室で腰かけ、呉葉と対峙する。

 病院中は、未だ騒ぎの真っ最中。割れたガラスは全て外へ散っているものの、安全を考慮してか、注意が呼びかけられている。

 ――というか、仮にも平和維持継続室にかかわっている病院なのに、妖怪に好き勝手されているのはどういうわけなのか。ちょっとたるみ過ぎな気がしないでもない。


「だが、妾は貴様を許す気はない。貴様は、夜貴を己の勝手な価値観で否定した。妾の愛する者を侮蔑する愚者を、どうしたら宥免できようか」

「何が愛よ、人間社会を脅かす妖怪のクセに。クチではどれだけ繕って見せても、私はごまかせないわ」


 私は、呉葉の内面を見透かそうとするかのようにその顔を見つめる。先ほどのような威圧感はあまり感じられないが、代わりにこれ以上ないほど不機嫌な表情を認識する。

 ――が、その顔が嘲りに変わった。


「ハッ、そんな狭い物の考えでは、夜貴のことを理解できるはずもないか」

「っ! なんですって――?」

「考える脳の無い愚か者だと、妾は言ったのだ」


 妖怪のくせに、こいつは何を言うのだろう。怒りが、私の頭の中を支配する。窒息しそうになるほどの、真っ赤な香辛料の粉末が詰まっているかのように。


「――貴様、夜貴が何故妾を妻として迎えたのか、それを理解する気すらないな?」

「――アンタが同情を誘ったなり、誘惑したなりしたんじゃないの?」

「同情はともかく、この体系で誘惑など無理だろう。――げふっ」

「なんでダメージ喰らってるのよ」

「今盛大に自爆したところだ。――とにかく、だ」


 呉葉は、私の目をまっすぐに見つめてきた。それは、この世に二とない、ルビーのような目だ。


「夜貴が妾と婚姻を結んだその理由。それは――それこそが、平和のためにあいつが導き出した答えだ」


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