《第471話》『鉛弾のクリスマスプレゼント』
「はなっ、離しなさいよっ!?」
「嫌だよ――っ!」
引き金を引くが、照準が定まらずあらぬ方向に穴が空く。その間に、狸妖怪は窓の外へと逃げて行ってしまった。
「っ、夜貴! 何してんのよ!」
「君こそ何してるんだよ藍妃!」
「妖怪の退治に決まってるでしょ!」
「あんな小さな子まで君は手にかけるつもりなの!?」
「ハァ!? あれは妖怪よ!? 人間に仇名す存在なのよ!? 現にアンタだって、酷い目にあわされてんじゃない!」
「ぼ、僕はマスタード押し込まれただけだよ――っ! 死ぬほど口がヒリヒリするけど、命に別状はないよ!」
「うるさいわね、弱っちいヤツは黙ってなさいよ!」
夜貴のことは大切だ。大切で、そして好きでもある。全肯定しよう。
けれど、この時ばかりはとてつもなくうっとおしく思えた。なんでコイツは、守られようとしているのにそれを邪魔するのか。
いつもそうだ。人のこと言えないが、それでも、そんな私よりも力の劣る奴のクセに。
「おい貴様、妾の夜貴に今何を言った?」
「……――ッ!?」
ゾクッ、っと。私の身体を恐怖が支配した。
背筋が凍りつく、というのはこう言うことを言うのだろう。後ろから投げかけられた一言。たったその短い言葉が。一瞬にして私を金縛りにした。
「呉葉――」
それは、目の前で暴れられるよりも。その力の差を私に実感させた。




