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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二章
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《第四十六話》『戦う理由』

「ふぅむ――」


 穹島先生は、顎に手を当て思案し始める。

 これまで僕らがモノのみごとに『物理幻術』の対象になり続けてしまったのは、ひとえに彼の姿を隠すための幻術のバラエティ豊かさもある。いかに僕らの教師とは言え、一度使った手段を決めるのは難しいのだ。

 だから、ほとんどそれ使い尽くした彼に、もはや先ほどの数の存在を生み出すことは出来ない。故に、奥の手のスタンガンを自分に使ったのだ。


「一時的に気を失う。一人では大きな隙も、二人なら小さくなるというわけじゃな。任務のために、己が身をも厭わない。組織の、ひいては儂の教え通りじゃな」


 穹島先生は、一つ嘆息する。疲れた時に発するそれによく似ているが、そこに込められた意図。それは――、


「全く、嘆かわしいと思う他ないのう」


 そう、「呆れ」だった。


「そもそも、お主らは何のために戦っておるんじゃ? 人か? 社会か? それとも特定の誰かか? 否、たとえどれを口にしたとしても、実際にお主らを突き動かすのは別の理由じゃろう」

「そんなワケのわからないことを言って、こっちの冷静さを奪おうとしても、無駄よ――!」

「かっかっか、ヒトの話を聞こうとしないところも相変わらずじゃな藍妃。じゃがな、この問いは他でもない、お主らのためでもある」


 穹島先生は、まっすぐ僕らを見つめてくる。

 何のために戦う? 人でもなく、社会でもなく。――僕は、特定の誰か。呉葉と答えたかもしれない。

 けど。先生は、僕は心の底ではそのように考えてはいないと。そう言っているというのだ。


「お前たちを縛りつけているそれは、呪いの鎖のようなモノだ。犬を繋ぎ、動きと考えを縛る。それから逃れることは、一人では容易ではない」


 先生が、一歩踏み出してくる。何か仕掛けてくると、僕らは身がまえた。


「《最強の妖怪》」

「――っ!」


 彼のその言葉は、僕らの頭から新手を引きだす合図。頭の中に、ある妖怪の顔がよぎりつつも、常に警戒していた周囲に現れた気配へと、術を放った。


 ――が、そこには誰もいなかった。


「――っ!?」

「儂はのう、樹那佐。静波多」


 ゆっくりと、真正面から歩いてきた先生が、僕の頭に触れた。さも、生徒を可愛がるかのように。


「そんなお主らを解放するために、動いておるのじゃ」


 その言葉と同時に、僕の知る限り最強の妖怪が、頭から引きずりだされた。


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