《第464話》『だがこの苛立ちは、それだけが原因なのだろうか』
「待て待て、暴力はいかんぞ! ――だいたい、妾に問うて来たと言う事は、幼馴染も大した手がかりは見つかっていないのではないか?」
「うぐっ、痛いところ付いてくるわね――」
「だが、正直この残骸をこれ以上探ったとて、見つかりそうもなかろう。それで思うのだが、」
「何よ?」
碌なことをしていないヤツなのに、なぜ仕切っているのだろうか。まあ、別にそんなことを気にするつもりは大してないのだが。
――と、思っていたら、
「一度諦め、次を待つというのはどうだ?」
「はぁ?」
何とも、のんびり間延びしたことをのたまいだした。
「宝の埋まっていない地面を掘ったところで、目につくモノは見つかりっこないぞ。ならば、次なる手がかりが現れるまで待つのも、一つの手ではないか」
「何を消極的なことを言ってるのよ!? 今回は大して何もなかったけど、夜貴が狙われたのよ!? また狙いに来ないとも限らないし、次は傷が開いて大参事になるかもしれないのよ!?」
「それは、そうだが――むぅ」
妙に歯切れ悪い反応。ホントに、何なんだこの女は。
夜貴に、そして一般市民たちに何かあってからでは遅いのだ。それにもかかわらず、さっきからふざけて、かと思えば待つとか言い出す始末。
流石に苛立ちがピークに達し、不満が本気で爆発しようとした。
その時、である。
「…………」
何ともつかない邪気と共に、貴婦人の亡霊のごとき女が、頭上から降りてきたのは。




