《第459話》『これは白鳥ですか? 違います、これはアヒルです』
「おっまえーっ!? どうしておら達の存在をほのめかす発言をォ!?」
「ざっと いず 王道」
おらは遊の襟首をつかんでガクンガクン揺する。が、相変わらずこいつは無表情で、しかし、なぜかピースサインをしている。
デカい顔をしている奴らが気に食わなかった故、出る杭を打つ目的でイタズラを仕掛けたのに、これではこちらに危険が及ぶ。そんなことは想定していない。
「ふうり、だったよな――?」
頭を抱えるおらに、背後からかかる声。その若干かっこつけたような声色で、すぐに誰か分かった。
「んむ? そういうあんたは狼山だったべな? こいつの保護者の」
「遊の保護者――は、まあ、間違いないけどな。それはともかく、こいつに言う事聞かせようって言うのが、そもそもの間違いだぜ……?」
「くっ、おらは既に深い絆が結ばれたモノだと――っ」
「逆だ、逆」
「うな――? な゛!?」
振り向いた時、そこにいたのは狼山 俊也だった。それは間違いない。
しかし、おらの目に映ったその姿は――、
「遊は、相手を気に入れば気にいる程、嫌がらせしたくなるいらん嗜虐心に溢れた奴なんだよ」
「アヒル山!?」
バレエ衣装、そして股間から生える白鳥――ではなくアヒルの頭。最後に見たのはモノの数分だったはず。しかし、その僅か前のような黒いロングコートの男の姿はどこにもない。
狼山改めアヒル山は、しかしその相変わらずな態度を変えることなく、いかにも慣れた様子で口を開いた。
「こうなった思誓 遊は、もはや手が付けられねぇ。トリック・バーサカーに話かけた時点で、こうなることは確定事項だったんだよ」
そのセリフはカッコよかった。アヒルバレリーナの姿でなければ。




