《第四十五話》『ただ一つの弱点』
「のう、元儂の教え子たち。このあたりでそろそろ諦めんか?」
「く――」
ビッグフットやモスマン、妖精やらネッシーやら、そしてもはやUMAでも何でもないT-レックスまでもを従えた穹島先生は、飄々と笑う。――彼の言う通り、僕らの状況は絶望的すぎた。主にモスマン。
「――しょうがないわね。準備はいい?」
「もっと早くに許可してよォ!」
「あんたのタイミングで使ったら勿体ないでしょ!?」
「そんなこと言ったって、モスマン!」
「あれだけ飛びぬけて強いのは、主にあんたの中の虫が苦手なイメージのせいでしょ!?」
「かっかっか! さて、往生際の悪さを教えたのは儂自身じゃからな? さて、どんな手を用意してきたのか、見届けてやろう」
全く、穹島先生も意地が悪い。彼は僕が虫嫌いなのを知っていて、わざと最初に出さなかったに違いない。
それは、彼の「後からいくらでもお前たちに触れられるぞ」というメッセージに他ならない。
「――っ、やるよ!」
「うん!」
そう言って、僕らは最初から用意していたスタンガンを取り出すと、
自分の首元へと思いっきり押し付けて電源を入れた。
「――っ!」
強力な電流が体を流れ、一時的に意識を奪う。だが、藍妃の言った通り、一瞬の内に復帰するだろう。
この狙いは、僕ら自身の意識を飛ばすことそのものにある。『物理幻術』は、幻術であるにもかかわらず物体を実際に生み出すという規格外の技だ。しかし、結局のところその軸は引きだした相手にあるのであり、たとえ一瞬でもそれが途絶えてしまえば――。
「穹島先生。僕らはあなたにいくらでも対処できます。ですから、おとなしく捕縛されて下さい」
この通り、圧倒的な物量は消え去ってしまうのである。




