《第456話》『二つ重なる愛の唄』
「うわァ!?」
「夜貴!」
怪人三体がマントを広げると、その中からそれぞれ「たまご」と「小麦粉」と「油」が飛び出してきた。夜貴はそれに対応する間もなく、全身で浴びてしまう。
『ここでチャッカ○ンを使い着火すれば、』
『天丼に乗せたくなるようなてんぷらの出来上がり』
『しかしこの奇々怪々たる怪人トンマロク、敢えてそれをせず無様なその姿を嗤う!』
我が身を張り、あの時のように私を守ろうと奔走する夜貴。訓練中の事故は、運よくその妖怪が苦手とするモノを偶然ぶつけたために撃退し、今この瞬間は、自分の身を犠牲に隙を作ろうとしてくれる。
けれど、それらの行動は危なっかしくて。何が起こるか分からないのに、どうして自らそんな状況に晒されに行くのか。
そんなのだから、目が離せない。目が離せないからとずっと見ていたから、ただ優しい意気地なしじゃない面もたくさん見つけた。こいつのいろんなことを知れた。
だから、気が付いたら好きになっていた。
「夜貴に――……ッ、何するの、」
「貴様ら夜貴に何をしているゥううううううううううううううううううッッ!!」
夜貴をイジメることに夢中になっている怪人を、全員もれなく粉々にしてやろうと武器を取り出しかけたその時、私がする前にそいつらは砕け散った。
小柄ながらも、白く美しい少女が夜貴と奴らの間に割って入るのと同時に。




