《第455話》『想いの思い出』
「藍妃――!」
「っ、夜貴!?」
流石に三体は――と思っていたところで、夜貴が私の前に飛び出した。というか、三体の怪人に対して立ちはだかった。
「ちょ、ちょっと、何やってんのよ!?」
「ここは僕が引き付けるから――! 藍妃は逃げるなり対策の手立てなりを!」
「落ちこぼれの怪我人に何が出来るって言うのよ!?」
あっという間に、余にも恥ずかしい姿にされてしまうであろうことは明白だった。その間、僅か数秒に過ぎないことは簡単に予想される。
「――僕にだって、」
「何よ?」
「僕にだって、出来ることはあるんだよ――!」
「――っ!」
私は、その言葉ではっとなった。同時に、昔の記憶が思い出される。
優秀とは言えないまでも、それなりの成績を残す私。一方、何をやっても平均を下回っていた夜貴。
当時は、何度もそんなコイツに毒を吐いたモノだ。実際その時になって足を引っ張られてはたまらないし、いかに人々のためにその命を使うと誓っていても、かと言ってそれが、無駄に命を落としていいことにはならない。
当時私が夜貴に対して悪態をついていたのは、色々な心配をしたうえでのことであることは、想像に難くない。何せ、どれだけ訓練を積んでも、一切何もできないと思っていたのだから。
――けれど、そんなある日。訓練の事故で、訓練用の妖怪の封印が解けてしまったことがあった。
私たちの戦闘訓練のために、大幅に力を押さえられていたその妖怪。しかし、拘束が敗れてしまい、当時訓練を監督していた先生は瀕死の重傷を負ってしまった。
そうして、その訓練場で立っているのは私と夜貴と言う、戦力としては歩きもできない赤子同然の二人。どれだけ絶望的な状況かを分かっていた私は、本気で死を覚悟した。
そんな時だった。私より劣っているはずの夜貴が、その妖怪に対して致命的な一打を与えたのは。




