《第449話》『怪人トンマロク、大惨状と共に参上!』
『クカカカカッ! ワレは「怪人トンマロク」! 完全無欠にして生きとし生ける者共の恐怖を煽る、悪夢的存在であるッ!』
窓を割って入ってきたのは、黒いシルクハットに黒いマントの、まさにこれぞ怪人と言う姿をした何者かだった。細身で長身の人型は全身黒ずくめで、その中で唯一白い仮面が、張り付けた笑顔のような造形をし、大変不気味な雰囲気を放っている。
「き、君は一体――!?」
『クカカカカッ! さて、ワレが取り出したるは瓶詰のダンゴムシ! およそ三千匹!』
「気持ち悪ッ!?」
『今からこれを、君が巻いている包帯に詰めてしんぜよう!』
「ええっ!?」
そう言うと、怪人トンマロクとかいう変質者は、夜貴にばさりと覆いかぶさり始める。続いてそのマントの中から、「いやーっ!」とか「やめてーっ!」とか言う悲鳴が――、
じゃなくて、見てる場合じゃないってば!?
「離れなさいよアンタ!」
私はいつものようにロケットランチャーを取り出し、そのまま怪人に向かって放つ。
怪人からは、微弱な妖気めいたものを感じる。そうでなくても、こいつはあからさまに悪事を働くと公言しているのだ。
だいたい、私の夜貴に何をしようと言うのか。私の大切なヒトを、ダンゴムシまみれにさせるわけにはいかない。
『カカカッ!』
しかし、怪人は夜貴から離れると同時にロケット弾を弾いて見せた。我が目を疑いながら、窓の外へと飛んでいくそれ。そして、着弾してもいないのに空中で花火を作って見せる。
だが、夜貴から離れた今がチャンス――!
「夜貴ッ!」
「藍妃!」
私は夜貴の手を引くと、そのまま一目散に病室を飛び出した。まずは、守るべきヒトの身の安全を確保しなければ。




