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《第445話》『病室で聞くノック音は一瞬の緊張を呼ぶ』
「うっ、痛っ!? お、おお、おおおお――……っ」
病院のベッドの上で、状態を起こした状態の僕。昼食を終えて、暇潰しの本(呉葉がやたらと勧めてくる文庫本サイズ)を取ろうとして、背中に痛みが走る。
下手に身体を動かすと、どうにも傷が引きつっていけない。この苦労は、完治するまで続きそうだ。
「――呉葉、やっぱり気にしてるなぁ」
表面上、僕に気を使わせまいという雰囲気が感じられる。しかし、そんな彼女の様子からは、重く思い詰めている様子が見え隠れしているのだ。
確かに、呉葉の気持ちは分からないでもない。正気を失っていたとはいえ、僕も活葉も大けがを負ってしまった。――活葉の方は、既に完治(半分鬼の血が混じっているかだろうか?)していたようだが、それでも、呉葉の顔には時折悲痛な表情が浮かぶ。
コンコン。
病室がノックされる。誰だろう? 呉葉が帰ってきたのかな。
――ちょっと、早い気もする。
「どうぞ」
「――お久しぶりね、夜貴」
「藍妃――?」
入ってきたのは、かつて同じ時期に訓練を受けていた少女、静波多 藍妃だった。




