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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十三章
439/1022

《第439話》『 に呉葉、汝 幸  なれ』

「――っ、おかーさん……?」

「…………」


 空間の境から狐と共に脱出すると、謳葉と活葉がこちらを向いて迎えてくれる。

 彼女らは夜貴を抱えており、沈鬱な表情をしていた。それもその筈、他ならぬ妾自身がその大切なヒトを傷つけてしまったのだから。


「――実に。実に、愚かなことをしでかして、しまった」

「…………」

「夜貴――……」

「おい」


 道摩を倒すため。そのために使った殺生石。酷く濃く、そして狂気的邪気にまみれていたその妖気は、今はどういうわけか、純粋なそれとなっている。

 しかし、今は消滅した邪念が妾を狂わせ――いや、現実逃避は止そう。


「――おい、狂気鬼」

「うるさい――」


 妾が。この妾自身が、手にかけてしまったことに変わりないのだ。言い訳など必要ない。原因は。罪は。他ならぬ妾に――、


「う、ぐ、く――っ」

「……――っ!!?」


 夜貴が。背中を真っ赤に染めていながらも、その目をゆっくりと開けた。


「だから、呼びかけておるじゃ――」

「夜貴ッッ!!」

「おとーさんッッ!」

「……――ッッ!!」


 あんな負傷をして、てっきり妾は――と、鬱屈していた気持ちが弾けた。

 よくわからないこと。すれ違ったこと。悲しいこと。それに対する重い気持ち。色々、それはもう、色々積み重なっていたけれど。


 今は。喜ぶべきことは。素直に、喜ぶべきであろう。



 掌の上からこぼれなかったそれは、確かに、そこに在るのだから。


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