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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十三章
438/1022

《第437話》『憎 と言 獣に、 を食 荒らさ てしま たのだか 』

「道摩――……道摩法師」


 時空の裂け目で戦い続け、どれほどの時が経っただろうか?

 少なくとも、一日中と言うことは無いハズだ。しかし、数十分、あるいは、数時間。ずっと力と力をぶつけ合っていた。


『ぜ、い゛、め゛ぇぇぇぇぇええええええええええ――ッッ』

「フン、もはや残留思念と呼ぶことさえ疑問を覚える程じゃな」

「わかっている」


 しかし、その分、道摩はもはやほとんどその力を残してはいなかった。

 宙に浮く、破片のようなモノがかろうじて顔らしきものを形成しているが、それすらももはや、粘土をこねて適当に形を繕ったもの程度でしかない。


「あの頃は、優しい時間が流れていたな。人生の長さを思えば、それ程多くの時を刻んだわけではなかったが」

『オ、ァ、オ゛オ゛オ゛、オ゛――……』


 出来損ないの刃を形成した破片が、力のない勢いで飛来してくる。

 ――妾は、それを片手で握り潰し、焼き尽くす。


「――すまない」

『ゼ、ぃ、め゛ェェェえええ、え゛え゛――……っ』


 もはや、己の怨む「安倍晴明」がどんな奴だったか。そもそも、それがあの時何をしたのか。それすらも、忘れてしまっているのだろう。

 それでも、戦意を失わない。憎悪と憤怒で、その魂を満たし続ける。


 心臓が痛む。これは物理的な傷ではない。


 その恨みは。怒りは。妾と過ごした日々――いや、道摩法師自身の人生そのものを、黒く塗りつぶし尽くしてしまうほどだと言うのか。


 ――妾は、周囲に散った破片と思念、その全てを鬼火で覆う。


「すまない。妾には――無力で無知な妾には、他に休ませてやる方法が思いつかん」

『ぃ゛、ぎ、せ゛、 、 、 メ ェ』


 せめて。――せめて、その憎しみに少しでも割りこめるくらいの思い出があれば。


「…………………………――――――――――――さらばだ」

『あ゛、び、 、、、 、  。 、。 く゛  、、 、れ゛、』


 旧き思い出に、共に思いを馳せられたかもしれない。


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